12時を回った半過ぎ頃。
店のシャッターは下り、中の様子など見ることなど叶わない。
中には先程の男性がカウンターの椅子に座ったままだ。
マリアはいない。
ウエイトレスの二人も帰ったようだった。
コツッコツッ…
奥の階段から人が降りてくる音がした。
男はビクッと肩を震わせた。
その音の先を見れば…そこにはマリアが立っている。
しかし、先程の優しさはかなり薄れ、瞳には優しさよりも鋭さが宿る。
黒と薄いグレーのストライプのスーツを着た彼女は、一言で言えば別人。
「貴方が、本当に“スノー・クイーン”なのか…?」
「どんな呼び方でもご自由に。貴方は依頼者ですから。まず、契約前に注意点をおさらいしましょう。」
「…注意点?」
「貴方は、噂をご存じのはず。まず、私の存在は基本的に口外厳禁。」
「もしも、破った場合は?」
「貴方を何らかの形で処分します。」
あまりもの冷たい声に、男は背筋を凍らせた。
「そんなことは今まで殆どありません。口外されるとすれば、噂であるか、新しい依頼者を呼ぶ場合か。」
「しかし、それでは今までの依頼者が口を滑らせたかもしれないだろう。」
「裏の業界をナメてもらっては困ります。出元など、探せば直ぐに出てくるんです。」
マリアの鋭き翡翠の瞳に、男は息を呑んだ。
「しかし、貴方が秘密を守れば、全く危険は及びません。第二に報酬のカタチです。」
「い、いくら払えばいいんだ…?」
「頂きません。」
「は??」
「一円も貰わない訳ではありません。内容によっては、その都度、料金が発生しますが…本依頼料は終わった後、成功し、貴方がお決めになった報酬に見合った額を私にお支払すれば結構です。」
「そ、そんなものでいいのか!?」
「大体の依頼者様の感謝の気持ちを金額にするので、私の方から金額を決めることはいたしません。それでも、一例を挙げましたら、100万や1000万を報酬に頂くこともありますし、お金の持ち合わせが少ない方も何回かに分けてお支払いにいらっしゃいますし、店の常連としてというカタチになる場合もあります。」
「貴方は…変わった人だな。」
「友人や同業の者にもよく言われます。」
マリアはフフフッと笑い、そしてもう一言付け加える。
「そして、最後の注意点。貴方が善でなければ、私が排除します。」
この言葉ばかりは、男も狼狽えた。
今すぐ、この場で殺されるのではないかと…息の詰まる思いを抱いた。
しかし…。
「前の俺は悪だったかもしれないが、今はその悪から足を洗った。その組織に追われてる。」
「組織の名は?」
「ヴァックストゥーム。」
「…あの人間をモルモットとしか見てない組織か……。」
マリアも噂には聞いている。
人型殺戮兵器(アンドロイド)や本物の人間を使った非人道的人体実験を繰り返し、人間を殺戮兵器にしようと試みていると…。
「よくも今まで逃げ切れたものですね。」
「自分でも驚いている。だが昨晩、寝こみを襲撃された。何とか回避したが…おそらく、次は実験データを取るために被験体を実戦に使ってくるだろう…そうなれば、命はない。」
「承知しました。依頼はお引き受けします。ただ、今回は先程の注意点で言いましたが、二つ目の内容による依頼料の上乗せ。銃器などを使うと思われるので、それの料金は最低でも依頼完了後ご請求します。」
「了解した。」
依頼者の男を隣の部屋に寝かせ、マリアは銃器の点検を始めた。
この店は自身の家ではないが、一応の寝起きが出来る上に、防弾ガラスに加えて、作りもしっかりしている。
マリアが動きやすい場所なのだ。
「ヴァックストゥームか…。」
殺人マシーンや、殺戮兵器、はたまた、殺戮兵士を作り出しているという。
そういった殺人は未だ報告されていないが…。
相手はかなり出来るだろう。
かなり型の古い拳銃を懐から取り出した。
今や、そんな古い銃を使うものは居ないだろう。
エンフィールドNo.2 Mk.Iを改造したもの。
マリアが初めて握った拳銃のため、それ以後手放せず、愛用している。
今回は何人、人を殺すだろうか。
マリアはその拳銃を持ったまま目を瞑り…。
まだ見ぬ敵に、ゆっくりと神経を集中させ、心を静めさせた。
店のシャッターは下り、中の様子など見ることなど叶わない。
中には先程の男性がカウンターの椅子に座ったままだ。
マリアはいない。
ウエイトレスの二人も帰ったようだった。
コツッコツッ…
奥の階段から人が降りてくる音がした。
男はビクッと肩を震わせた。
その音の先を見れば…そこにはマリアが立っている。
しかし、先程の優しさはかなり薄れ、瞳には優しさよりも鋭さが宿る。
黒と薄いグレーのストライプのスーツを着た彼女は、一言で言えば別人。
「貴方が、本当に“スノー・クイーン”なのか…?」
「どんな呼び方でもご自由に。貴方は依頼者ですから。まず、契約前に注意点をおさらいしましょう。」
「…注意点?」
「貴方は、噂をご存じのはず。まず、私の存在は基本的に口外厳禁。」
「もしも、破った場合は?」
「貴方を何らかの形で処分します。」
あまりもの冷たい声に、男は背筋を凍らせた。
「そんなことは今まで殆どありません。口外されるとすれば、噂であるか、新しい依頼者を呼ぶ場合か。」
「しかし、それでは今までの依頼者が口を滑らせたかもしれないだろう。」
「裏の業界をナメてもらっては困ります。出元など、探せば直ぐに出てくるんです。」
マリアの鋭き翡翠の瞳に、男は息を呑んだ。
「しかし、貴方が秘密を守れば、全く危険は及びません。第二に報酬のカタチです。」
「い、いくら払えばいいんだ…?」
「頂きません。」
「は??」
「一円も貰わない訳ではありません。内容によっては、その都度、料金が発生しますが…本依頼料は終わった後、成功し、貴方がお決めになった報酬に見合った額を私にお支払すれば結構です。」
「そ、そんなものでいいのか!?」
「大体の依頼者様の感謝の気持ちを金額にするので、私の方から金額を決めることはいたしません。それでも、一例を挙げましたら、100万や1000万を報酬に頂くこともありますし、お金の持ち合わせが少ない方も何回かに分けてお支払いにいらっしゃいますし、店の常連としてというカタチになる場合もあります。」
「貴方は…変わった人だな。」
「友人や同業の者にもよく言われます。」
マリアはフフフッと笑い、そしてもう一言付け加える。
「そして、最後の注意点。貴方が善でなければ、私が排除します。」
この言葉ばかりは、男も狼狽えた。
今すぐ、この場で殺されるのではないかと…息の詰まる思いを抱いた。
しかし…。
「前の俺は悪だったかもしれないが、今はその悪から足を洗った。その組織に追われてる。」
「組織の名は?」
「ヴァックストゥーム。」
「…あの人間をモルモットとしか見てない組織か……。」
マリアも噂には聞いている。
人型殺戮兵器(アンドロイド)や本物の人間を使った非人道的人体実験を繰り返し、人間を殺戮兵器にしようと試みていると…。
「よくも今まで逃げ切れたものですね。」
「自分でも驚いている。だが昨晩、寝こみを襲撃された。何とか回避したが…おそらく、次は実験データを取るために被験体を実戦に使ってくるだろう…そうなれば、命はない。」
「承知しました。依頼はお引き受けします。ただ、今回は先程の注意点で言いましたが、二つ目の内容による依頼料の上乗せ。銃器などを使うと思われるので、それの料金は最低でも依頼完了後ご請求します。」
「了解した。」
依頼者の男を隣の部屋に寝かせ、マリアは銃器の点検を始めた。
この店は自身の家ではないが、一応の寝起きが出来る上に、防弾ガラスに加えて、作りもしっかりしている。
マリアが動きやすい場所なのだ。
「ヴァックストゥームか…。」
殺人マシーンや、殺戮兵器、はたまた、殺戮兵士を作り出しているという。
そういった殺人は未だ報告されていないが…。
相手はかなり出来るだろう。
かなり型の古い拳銃を懐から取り出した。
今や、そんな古い銃を使うものは居ないだろう。
エンフィールドNo.2 Mk.Iを改造したもの。
マリアが初めて握った拳銃のため、それ以後手放せず、愛用している。
今回は何人、人を殺すだろうか。
マリアはその拳銃を持ったまま目を瞑り…。
まだ見ぬ敵に、ゆっくりと神経を集中させ、心を静めさせた。



















